網膜・硝子体手術は非常に高度でデリケートなため、日本では入院による手術がほとんどですが、アメリカでは早くから日帰り網膜・硝子体手術が数多く行われています。当院でも開院以来、網膜・硝子体手術を日帰りで行ってきました。日本でも日帰り白内障手術が普及したように、網膜・硝子体手術も日帰り手術が増えてきており、全国的に普及していくものと思われます。
網膜とは眼の奥にある膜のことで、眼をカメラに例えるとフィルムの役割をしている部分です。ここが障害されると視力が低下して、字を読んだりテレビを見たりできなくなります。硝子体とは瞳の中にあるゼリー状の透明な部分で、眼球の形を整えているものです。これらの部分に何らかの病変がある場合、視力低下や視野異常が起こり日常生活に支障をきたします。全身的な疾患(高血圧・糖尿病など)が原因となっていることが多いため、内科でのコントロールも重要になります。
灌流液(眼球を保水)を流し入れながら、濁ったり出血したりしている硝子体を取り除き、眼球内をきれいにする手術です。網膜にレーザーで光凝固を行ったり、膜がはっているような場合は、膜を剥がしたりします。また剥がれている網膜を元の状態に復位させ、落ち着かせるために空気やガスなどを注入する場合もあります。眼の状態によりこれらを組み合わせることで、疾患が進行しないようにする手術です。
手術時間は眼の状態により異なりますが、30分~2時間程度です。
また当院では、手術侵襲の少ない25~27Gシステムで手術を行っています。これにより、0.6mm程度の傷口が数か所しかできず、手術後の炎症もわずかとなりました。
視力が回復するのにはしばらく時間がかかります。また、ガスを注入した方は、1週間程度常に下向きで安静にしてしただくことになります。事前にお仕事の調整や安静などについて、執刀医とご相談下さい。手術の内容によっては、追加手術や再手術が必要な場合もあります。
糖尿病のコントロールが悪い場合、循環不全により網膜の血管が障害され、弱い血管が増えます。弱い血管はすぐに出血し、増殖組織という膜を作ってしまいます。これが網膜を牽引し、網膜剥離を起こすこともあります。進行したものでは手術をしても視力があまり回復せず、失明する可能性もある病気なので早期治療が必要です。(内科的コントロールも合わせ重要です。)
硝子体出血の原因には、網膜の血管が詰まって網膜が腫れる網膜静脈閉塞症や、網膜に弱い血管ができ、それが破れて出血する糖尿病網膜症、網膜に穴が開く網膜裂孔などがあります。止血剤を服用して自然に吸収するのを待つ場合もありますが、出血の程度や長期にわたって視力が障害される場合は手術となります。
網膜で視力を感じる大事な部分(黄斑)に穴があいてしまい、視野中央が見えなくなる病気です。
網膜で視力を感じる大事な部分(黄斑)に膜がはってしまう病気です。膜の収縮により視力低下やゆがみなどが起こります。
網膜がはがれる病気で、網膜に穴があき、そこから眼球内の水が網膜の下に入り込む場合と、硝子体の変性によって網膜が引っ張られ、網膜がはがれる場合があります。
網膜剥離は眼科における緊急性のある手術の代表です。そのまま放置しますと、多くの場合、増殖変化が生じて手術が困難になり、失明する危険すらあります。発症したならば、可及的速やかに手術が必要です。
網膜剥離の手術は、網膜にできた孔(裂け目)を塞ぐことが主眼となります。方法として(1)強膜側からアプローチするバックリング法と、(2)硝子体側からアプローチする硝子体手術があります。症例により、どちらが適切か選択しますが、最近は硝子体側からのアプローチが多くなりました。
その理由は、バックリングにより、術後の疼痛、屈折変化、眼球運動障害などの合併症が懸念されるからです。一方、硝子体手術では、水晶体混濁(白内障)が頻発しますので、中年以上の方では白内障手術の同時施行が必要となることもあります。
バックリング手術では術後の安静に注意が必要です。また、硝子体手術では眼内にガスまたはシリコンオイルを入れて網膜をくっつけますので、一定の体位保持が必要になることがあります。
以上のことを十分理解すれば、網膜剥離の日帰り手術が可能となります。
当院では、開院当初より日帰り網膜剥離手術の経験を積み重ねてきました。
安心して網膜剥離手術をお受けください。
医療費が高額になった場合、一定の自己負担限度額を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。年齢や所得に応じて、ご本人が支払う医療費の上限が定められており、またいくつかの条件を満たすことにより、さらに負担を軽減する仕組みも設けられています。
所得・年齢ごとの自己負担限度額及び申請方法など詳細については、市区町村の役所の窓口でお尋ねになるか、厚生労働省のホームページ高額療養費制度を利用される皆さまへのPDFファイルをご覧ください。